ここは、町のみんなを笑顔にする小さなおにぎり屋さん。店主のいたるおじさんは、ただの優しいおじさんではありません。実はおにぎり界を牛耳る「四天王」と呼ばれる強敵たちと料理バトルを繰り広げ、フレンチの坂井シェフ、ハヤブサのタツ、そして香りの魔術師倍賞美津子さんという3人の刺客を次々と打ち破ってきた凄腕の持ち主なのです。
そしていよいよ、四天王最後の一人、「おにぎり太郎」と対峙する日がやってきました。おにぎり太郎は、その名の通り、見るからにおにぎりのようにふっくらして美味しそうな顔つきをした男でした。
今回の対決ルールはシンプルかつ過酷でした。「具は一切なし。お互いに最高のお米と道具を用意し、究極の『塩むすび』を握ること」
対決の前日、いたるおじさんの相棒であるネズミくんが、血相を変えて店に飛び込んできました。
「いたるおじさん、大変だよ! おにぎり太郎の用意した素材が凄すぎる! 大分県の山奥で少ししか取れない幻のコシヒカリに、大分の名水。自分で鉄を打って作った特製の羽釜に、最高級の備長炭! 塩は3種類をブレンドして、海苔は有明海産の最高級品だって!」
ネズミくんは震えていました。「いたるおじさんは、どんな凄い道具で勝負するの?」
いたるおじさんはニコッと笑って答えました。
「大丈夫だよネズミくん。僕も奮発して、スーパーの『アルタ』で1キロ2500円もする一番高いお米を買ってきたよ! お水は『マックスバリュ』で買った六甲のおいしい水(2リットル100円)だ」
「う、うーん……」「塩はもちろん『伯方の塩』さ! そして道具は……『ベスト電器』で5万円もした最新型の3合炊き炊飯ジャーだ! すごいだろう?」「う、うーん……」
ネズミくんは頭を抱えましたが、「いたるおじさんは道具じゃなくて技術で勝負だもんね!」と、あえて明るく励ますしかありませんでした。